ブログモデルをつくろう
1つ前のレッスンでは、ウェブページを表示させることができるようになりました。続いて、このレッスンでは、ブログ記事をデータベースに登録するための方法を学びます。
このレッスンでは、ブログオブジェクト(ブログ記事)を扱うことになるので、オブジェクト指向の考え方が重要になります。不安な人はこちらの記事(【Python】オブジェクト指向を理解するための超重要ワードまとめ)でもう一度復習しておくことをおすすめします。
データベースってどんなもの?
まずは、データベースについて理解しましょう。名前を聞いただけで、なんとなく「データが保存される場所」であることはイメージがつくのではないでしょうか。
その認識で全く問題ありません。ウェブサービスを運営していると、様々なデータを扱うことになりますが、それを保管している場所がデータベースです。
例えば、新規にユーザー登録した人がいればその人の名前や年齢などのユーザー情報を保管しなければなりませんし、新しくブログが投稿されたときのためにブログ情報を保管しておくデータベースも必要です。
データベースがあればデータを保管するだけではなく、データを操作したり検索したりすることも可能となります。
では、具体的にデータベースはどのような構成になっているのでしょうか。
データベースは、以下のような表になっており、この表のことをテーブル
、横の行の1つ1つをデータ(またはレコード)
、縦の列をフィールド(またはカラム)
といいます。
1つの行につき1つのインスタンスを保管し、各フィールドでそのインスタンスのプロパティを保管しています。
データベースを作ってみよう
それでは、実際にブログ記事を保管するデータベース:Blogsテーブル
を作ってみましょう。
新たにテーブルを作るときは、モデル
というものを使います。モデルとは、データベースとやりとりするクラスのことです。
クラスとは、オブジェクトの設計図のことでしたね。ブログ管理サイトでは、様々なブログ記事(ブログオブジェクト)が作成されることになりますが、ブログ記事に必要な情報(プロパティ)をクラスをによって定義してあげます。ブログ記事に必要な情報とは、タイトル、本文、作成日、更新日などのことです。
本来、データベースを操作するときはSQLという言語を使うのですが、この「モデル」があることでPythonコードでデータベースの構造を記述し、簡単に操作できるようになります。
また、Djangoにおけるモデルとは、データベースに保存したいデータの構造を指定したもののことです。通常、一つのモデルに対して一つのデータベーステーブルが割り当てられ、各アプリケーション内のmodels.py
に記述していきます。
今回作成するブログモデルのコードは以下の通りです。
django_blog/blogs/models.py
from django.db import models
class Blog(models.Model):
title = models.CharField(blank=False, null=False, max_length=150)
text = models.TextField(blank=True)
created_datetime = models.DateTimeField(auto_now_add=True)
updated_datetime = models.DateTimeField(auto_now=True)
def __str__(self):
return self.title
先頭で、from django.db import models
をインポートします。これはDjangoにおけるモデルの型の基本形であり、それを継承させたBlog
モデルクラスを作成していきます。これによって、このクラスを元に作られたインスタンスはデータベースに保存すべきオブジェクトであるという設定をしています。
モデルを作るときは、「Blogs」の様に複数形で書かずに「Blog」と単数形で書きます。これによって「Blogs」という名称のテーブルを自動生成してくれます。また、Pythonでクラスを作る時同様最初の文字は大文字で始めます。
次に、「title」や「text」の部分では、Blogsテーブルのフィールドを作成しています。この記述により、以下のようなテーブルを作ることができます。
フィールドについての記述の内容について詳しく説明します。
django_blog/blogs/models.py
title = models.CharField(blank=False, null=False, max_length=150)
まず、フィールドにtitle
という名前(フィールド名)をつけて、右辺でmodels.CharField
という型を指定しています。このようにフィールドにはいくつか型の種類があり、型を指定することによって意図しないデータが入力されることを防いでいます。このmodels.CharField
は文字列を入力できるようにした型になります。当然、タイトルには文字列が入ることになりますからね。(CharFieldは、文字を意味するCharacterからきていると思われます)
さらにmodels.CharField
の中にいくつか条件を指定することができます。例えば、blank=False, null=False
は、このフィールドが空欄であってはいけないということを示しています。ブログ記事のタイトルが空欄なのはまずいですもんね。
※blankとnullの違いは、別のチュートリアルで詳しく説明しますが、ざっくり、入力フォームでの空欄を許容するかどうかと、データベース上での空欄を許容するかどうかの違いだと思っていてください。
また、max_length=150
はタイトル文字数を最大150字に制限しています。
このように、フィールドの型と、各種条件をつけてデータベースのデータの形を設計していきます。
一部未翻訳ですが、こちらの公式ドキュメントで指定できるフィールド型とオプションを確認することができます。よく利用する型やフィールドについては今後のチュートリアルでも解説していきます。
created_datetime, updated_datetime
のフィールドでは、models.DateTimeField
という型を使って、日時情報を保存するように指定しています。もちろん、日時情報を自分で手動入力して保存することもできますが、今回はauto_now_add, auto_now
という引数を与えることで、インスタンスが作成された日時、更新された日時を自動的に保存するよう設定しています。
最後のdef __str__(self)
の部分は、このモデルで作成されたインスタンス(一つ一つのブログ記事のこと)自体を指し示すときに利用する文字列を指定しています。これにより、管理ページなどで各インスタンスを表示するときはブログ記事のタイトルで表示されることになります。(この記述だけだとよくわからないと思いますので、後で詳しく説明します。)
マイグレーション
ここまでで、Blogモデルを作成することができました。ただ、モデルはあくまで「設計図」であるため、現段階だとデータベースの設計図を作ったに過ぎません。この設計図を元に実際にデータベースを作成するには、もう少しだけしなければならないことがあります。
それがマイグレート
という作業です。マイグレートとは、models.pyファイルで定義したデータベースの設計を、実際にデータベースに反映させることを言います。マイグレートするためには、以下2つのコマンドを実行します。
django_blog/
$ python manage.py makemigrations
$ python manage.py migrate
python manage.py makemigrations
コマンドでは「マイグレーションファイル」というものを作っています。マイグレーションファイルとは、models.pyファイルで作成したデータベースの設計情報がまとめられたファイルです。このコマンドによって、django_blog/blogs/migrations
ディレクトリの中にマイグレーションファイルが新たに追加されます。
python manage.py migrate
コマンドは、マイグレーションファイルの情報をデータベースに反映させるコマンドです。
これにより、models.pyファイルで作成したBlogモデルをデータベースに反映させることができました。
このように、データベースを作るときは、「models.pyファイルで設計 → マイグレート処理で反映」という手順で行います。models.pyファイルに何か変更を加えた時(例えばタイトルフィールドの文字数制限を150文字から200文字に変えた時)は、その都度マイグレート処理を行い変更内容をデータベースに反映させることを忘れないようにしてください。
Adminページを利用する
続いて、Adminページを利用できるような設定をしましょう。Adminページとは管理者のみが使用できるページのことで、通常は自前で作成しなければならないものなのですが、なんとDjangoはこの管理ページを自動的に生成してくれるという素晴らしい特徴を持っています!これがDjangoが多くの海外デベロッパーに愛されている理由の一つです。
Djangoでは、models.py
で指定したモデルクラスから自動的に管理ページのインターフェースを提供してくれます。これにより、新しいデータの追加や編集、削除などの機能が管理者ページから簡単に利用できるのです。
Adminページは<ドメイン>/admin
というURLからアクセスすることができ、最初になんのモデルも作成していない状態でもデフォルトのページを利用することができます。今回は、作成したBlogモデルをAdminで利用できるようにしてみます。また、実際にブログ記事を管理ページ上から作成してみましょう。
まずは、管理ページにアクセスするために管理者アカウントを作成しましょう。Djangoでは、管理者のことをスーパーユーザー
と呼びます。スーパーユーザーのアカウントはコマンドラインから作成することができます。
※スーパーユーザーアカウントを作成
django_blog/
$ python manage.py createsuperuser
コマンドを実行するとユーザー名、メールアドレス、パスワードを聞かれるので、自分の好きなように入力してください。パスワードは、入力してもターミナルには何の文字も表示されませんが、表示されないだけでちゃんと入力されているので心配しないでください。ユーザー名は、Username (leave blank to use 'User_Name'):
の様に聞かれますが、書いてあるとおり、ブランク、つまりなにも入力せずにEnterを押すと'User_Name'の部分がそのままユーザー名になります。
これで管理者アカウントが作成されました!実際にAdminページにアクセスしてみましょう。ローカルサーバーを立ち上げて、http://127.0.0.1:8000/admin
というURLからアクセスすることができます。
最初にログインが要求されると思いますが、いま作成した管理者アカウントでログインできます。ログインするとこのような画面が表示されます。
管理するためのページといっても、まだデフォルトの状態なのでユーザー情報くらいしか管理することができません。次は、この画面でBlogsテーブルの情報を管理できるように設定していきましょう。ちなみにですが、この管理ページが日本語で表示されているのは、settings.pyファイルのLANGUAGE_CODE を'ja'に設定しているおかげです。
Adminページを編集するためにはadmin.py
ファイルを使います。まずはBlogモデルをadmin.py
に登録します。admin.pyファイルを開いて、このように書いてください。
※BlogモデルをAdminに追加
django_blog/blogs/admin.py
from django.contrib import admin
from .models import Blog
admin.site.register(Blog)
from .models import Blog
は、admin.pyファイルと同じ階層にあるmodels.py
ファイルで定義したBlogモデルをインポートして、このファイルで扱えるようにしています。modelsの前にあるドットは、同じ階層にあることを示しています。
そしてadmin.site.register(Blog)
の部分でインポートしたBlogモデルを、Adminページで利用できるようにしています。これにより、AdminページでBlogの情報を見ることができるようになります。エディタを保存して、再度http://127.0.0.1:8000/admin
にアクセスしてください。
Blogsというパートが表示されるようになっているはずです。これでブログ記事の管理ができるようになりました!このように、Blogモデルを作ると自動的にBlogs
と複数形にしてテーブルを作ってくれます。
管理ページからブログを投稿してみよう
では、実際にブログの記事を作成してみましょう。
Blogsという欄の「追加」ボタンをクリックしてください。すると、こんな画面が表示されましたね。
「Title」と「Text」と表示されていますが、models.pyファイルで定義したBlogクラスのフィールド名が表示されています。ここには文字列型を入れられる設定にしていましたよね。
このページから新規のブログ投稿を行うことができるので実際に一つブログを投稿してみましょう。好きなようにタイトルと本文を入力し、右下の「保存」ボタンで保存しましょう。ちなみに、タイトルを入力しないまま保存ボタンを押すとエラーメッセージが表示されます。このフィールドはblank=False
を指定してますからね!
これでBlogクラスを元にBlogインスタンスを作ることができました。クラスは「オブジェクトを量産するための設計図」、インスタンスは「クラスを元に作られた個々のオブジェクトのこと」でしたね。
テスト用にもう一つか二つ程度、記事を投稿してみてください。
ここで先ほどちょっと説明した、def __str__(self)
の説明をします。ブログオブジェクトの一覧ページ(http://127.0.0.1:8000/admin/blogs/blog/)にいくと、それぞれのブログのタイトルが表示されていますよね。ここにタイトルが表示されるのは以下のようにself.title
と記述しているからです。
django_blog/blogs/models.py
・・・
def __str__(self):
return self.title
例えば、ここをself.text
と書き換えると、ブログの本文が見出しとして表示されるようになります。
このようにdef __str__(self)
の部分では、そのオブジェクトを扱う上で使用するフィールドを指定しているのです。
また、このページには現在タイトルだけが表示されていますが、ここには複数のフィールドを表示させることができます。admin.pyファイルを編集することで可能です。以下のように書き換えてみてください。
django_blog/blogs/admin.py
from django.contrib import admin
from .models import Blog
class BlogAdmin(admin.ModelAdmin):
list_display = ('id', 'title', 'created_datetime', 'updated_datetime')
list_display_links = ('id', 'title')
admin.site.register(Blog, BlogAdmin)
list_display
で指定したフィールドが管理ページに表示されるようになります。list_display_links
で指定したフィールドはリンクがつくようになります。
ここでちょっと見慣れないフィールドが出てきましたね。そうです、id
のことです。ID
は、インスタンスがデータベースに保存される時に自動的に割り振られる番号です。1つのインスタンスに対して1つの番号が割り振られます。
IDはこの後のレッスンで扱いますので、1つのインスタンスに1つのIDがつくことを覚えておいてください。
これでこのレッスンは終わりです!長くて難しい内容だったと思いますが、うまくできましたか?データを扱うことで少しずつWebサービスっぽくなってきましたね!
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